マニラ在住ご夫妻インタビュー

今回、インタビューにご協力いただいた方: 中川功(こう)さん・朗子(あきこ)さんご夫妻

*奥様      *ご主人     インタビュアー:須藤


*ご主人: 教育って、けっこう、親のエゴで、自分の思い通りにしたいところがあって、自分がこうだったから息子にもいいだろうと、それは親のエゴだと思うんですけど、それしか拠りどころがないんですよ。わたしなんかやっぱり日本人的に育てられているんですね、この地にいながら。それが、よかったか、悪かったかっていうと、わたしはそれははるかによかったと思っているんですね。それはやっぱりバックボーンができているというか、「お前はなにものだ」というときに「わたしは日本人だ」という。日本語が不安定だと、その辺が揺らぐと思うんですね。 言語学的にも日本語って難しいと思うんですね。だから、どんなに流暢な日本語を話す外国人でもちょっと変なんです。ところが、流暢な英語を話す日本人とか、ベトナム人とか、タイ人とか、ふつうなんですよ。英語っていうのは、ユニバーサルになるなにかがあるんでしょうね。そういう観点からだけではないですけど、ことばにはツールという面と文化が凝縮されている面と、たとえば、「どうも」なんて、英語で説明できないですから、「どうも」が理解できるかどうかが、日本人か外国人かの違いというか。
*奥様: たとえば、これだけグローバル化されて、将来どこに住むかわからない、もしかしたら日本に住まないかもしれないじゃないですか。
*ご主人: だからこそ、日本人としてのアイデンティティーは大切だと思うんですよ。 要は無重力状態だと、人間は体がおかしくなるでしょ? それが教育ということでいうとことばと文化というのがそれで、重力とか方向性とかかろうじて持っていないと、逆にこういうグローバル化の時代に自分を見失ってしまうんじゃないかなと 。
*奥様: 主人のようにこちらで会社をやっている人は少ないんですけど、銀行系で半永久的にこちらにいらっしゃる方は、けっこういらっしゃるんですね。で、そこのお子さんたちは、ブリティッシュ系かアメリカ系のインターナショナルに小・中・高までそこに入れようかなって思っている人がほとんどで、ここにずっと長くいて、日本人学校にいれようかなっていうのは、うちくらいなんです。だから、みんなうちでどうやって日本語の教育とか、日本の文化とか、教育しようと思っているのかわからないですけれども、長くいる人はインターナショナルの文化に触れさせようとしている人が多いのかな、と思いますね。
須藤: そうしたときに、じゃあ、その先はどうするのか、お子さんにどうさせたいのか、っていうところまで考えていないと、そこでいきなり日本の大学に入って、授業ついていけるかっていうとそれは難しいですよね。
*奥様: みんなが希望しているのは、上智の推薦があるんですって、成績がもちろんトップでないといけないんですけど、うまくいったらその推薦がもらえるって、あと、ブリティッシュの場合は、そこからイギリスの学校に入れてもいいかなって、アメリカ系の人はアメリカの大学に行ってもいいと考えているみたいで、日本にだけ固執しなければ、そういう教育方法もあるかと思うんですけど。上智は半分くらい帰国の方なんですよね? それだったらそんなに違和感もないんでしょうけどね。
須藤: 一方で、そのプロセスにおいて、日本語の教育をどうするのかっていう考えをしっかりもっていらっしゃれば問題ないと思うんですけど、それがないと、ほんとに日本語ができない、日本人としてのアイデンティティーがない状態のお子さんになって、それを否定するつもりではないんですよ。ただ、そこは、ほんとに教育方針というか。
*奥様: 正解はないですよね。
須藤: 正解はないですね。でも、後から、「あ、こうしておけばよかった」ってならないように。
*ご主人: そうそう、特に日本語は難しいですよ。英語の場合は、かろうじて挽回できるというか、習得しやすい。日本語の場合は挽回不可能。ま、挽回不可能だからやるっていうんじゃなくて、日本語にはそれなりにすばらしい文化がありますし、自分にとってのローカルなもの、それをやっぱり、取り込まないというのはもったいないかなと思うんですね。ま、アメリカ人が日本の文化に精通する必要もないわけですけども、インターナショナルっていうのは、ことばがしゃべれるのももちろんインターナショナルなんですけど、自分を伝えること、「意思表示」の部分でインターナショナルであるということだと思うんです。だから、英語なんかあんまりしゃべれなくても、ぼそぼそって言って、自分の考えを伝えられるもの、それはそれでインターナショナルなんだなって。それがいわゆるバックボーンなんですよ。
須藤: 今のインターナショナル観はいいですね。
*ご主人: 彼女(奥さま)には、彼女なりの考えもありますし、ことばに苦労してきている人は、それなりの思いをしてきていますので、それはリスペクトして、なるべくバランスの取れたことばっていうのも確かに大切ですから、お互いに気の利いたことばが出てこないときには、それなりにフラストレーションもたまりますので、そういう意味では、フィリピンというのは、練習する場がいくらでもありますので。
須藤: どうもありがとうございました。本日は、ご主人が教育にかかわることやご夫妻間での対話の重要性を改めて教えていただいた気がします。


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